文の林

つたない文章の雑木林です

ケンタロウの年の瀬

クリスマスはケーキを食べる日。
ケンタロウは、クリスマスはキリストさんの
誕生日なのは聞いて知っていた。
それなら、サンタクロースは誰なのだろう?
キリストさんのお父さんかおじいさんかなと
考えていた。
キリストさんは、病気の人に手をかざすと
病気を治したと言う。
キリストさんの身内のサンタクロースなら、
トナカイに引かれたソリで空を飛ぶことも
できるのだろうと納得していた。
ケンタロウの家はキリスト教ではないが、
甘いケーキを食べることで満足していた。

ケンタロウはお母さんからサンタクロースの
話を聞いて寝た。
トナカイのかわりに家で飼っているメス牛の
モモちゃんがサンタクロースを乗せたソリを
引っ張って空を飛んでいる夢を見た。
友達が枕もとに靴下を置いて寝ると
朝になると靴下の中にプレゼントが
入っていると教えてくれた。
ケンタロウは、朝になって靴下の中を
確認したけれど何も入っていなかった。

年賀状はクリスマスの時期に書く。
クリスマスケーキやクリスマスツリー、
サンタクロースの絵を描こうとしたら
お母さんに、年賀状は正月に届くので
描いては駄目と言われた。
ケンタロウは、頭の中はクリスマスなので
どうしても正月の絵は思い浮かばなかった。

ケンタロウの家では、鶏肉は24日ではなく、
25日に食べた。
お母さんは25日まで待てば安くなるからねと
教えてくれた。

年末には餅つきをした。
床が板張りで固い狭い玄関で行った。
家の中は、もち米を蒸す大量の湯気で
曇っていた。
みんなで1日がかりの作業だった。
小学校の高学年では杵で餅をついた。
出来立ては暖かくてやわらかだった。
お母さんは大きな鏡餅も作った。
ケンタロウは、中に餡を入れたあんころ餅が
一番好きだった。

牛や馬を飼っていたのでお父さんと
お母さんには正月休みはない。
子供は楽しい楽しい冬休みだ。

晦日にお父さんから神棚にお供えした
お酒「お神酒」を少しもらって舐めてみた。
お父さんは美味しそうに飲むのに、
ケンタロウは胸がカーッと熱くなり、
徐々に胸がムカムカしてきた。
そのあとに食べたものが美味しくなかった。
その年以降、お神酒をもらうことは
なかった。

正月って、何で正しい月なのか?
ケンタロウは、「正しくない月もあるの?」って
お父さんに聞いたら、
「あらためる月、また1月から始まるということ」
と、教えてくれた。