文の林

つたない文章の雑木林です

楽しい、言彦(4)

九死に一生を得る」
私が今生きているのは
前に9回死んでいるのかな?

「一度あることは二度ある」
一回嘘をついたら、次も嘘をつく
「ニ度あることは三度ある」
二回嘘をついたら、また続けて嘘をつく
一回目から正直だったら
二回目も三回目も正直なので
「三度目の正直」という事は無い

「七転び八起き」って、
一番最初は、転んでいて、次に起きて
転んで、起きて、転んで、起きて、、、
今は起きているのだ。
何回転んだか覚えていなくても、
最後は起きて終わりなので安心しな。

「色の白いは七難隠す」
色の黒いのは七難あらわすが
黒くてわからない

私の大好きな芸人「タカアンドトシ」にちなんで
「年には勝てぬ」を転じて
「トシには勝てぬ」
「鳶が鷹を生む」を転じて
「鳶がタカを産む」
いっそ、一緒にして
「トシがタカを産む」って、どう?

「女房と畳は新しいほうがよい」
ならば
夫で財産もちは古いほどよい

「顔に泥を塗る」
泥パックで生き生きお肌にするのだ
「傷に塩を塗る」
痛いのなら砂糖を塗ってみよう

「無用の長物」なのに
「長い物には巻かれろ」ってさ。

「嘘から出たまこと」
まことを出すため、嘘をついても良いのだ。

「根も葉もない」
それでも、実があればいいや

「煮ても焼いても食えない」
それなら、生で食べよう

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」
今年の夏の暑さも、
喉元すぎれば涼しくなるかなぁ

「箸にも棒にも掛からぬ」が
犬が、ひっかかった
「犬も歩けば棒に当たる」
だったのだ

「寝技」、「足技」、「離れ業」、
「神業」、わざわざ、たくさんありますが、
私は「ことわざ」が好きだな。

ケンタロウの長靴

雨降りの後も長靴を履いていたとき、
家を壊して積んである材木の上を歩いていて、
板に打ち付けていた釘を踏んでしまった。
足の裏に少しだけチクリと痛みを感じ、
靴の底に穴を開けてしまった。
水たまりに入ると靴の中に水が入ってくる。
このことを正直にお母さんに言うと、
「釘が足に刺さったらどうするの」と
怒られるので言ってない。

冬は外に出るときはいつも長靴だ。
去年履いていた長靴は少しきつくなってきた。
お母さんに穴の事は言わないで
足が大きくなったから新しい長靴を
買ってほしいと頼んだ。
だめかな~と思っていたら
お母さんが新しい長靴を買ってきてくれた。
真っ黒でツヤのあるピカピカの長靴だ。
見ているだけでワクワクしてくる。
とりあえず部屋の中でそっと足を入れてみる。
ちょっと大きいかな。
お母さんはケンタロウの足が大きくなるのを
見込んで少し大きいサイズのものを
買ってきたようだ。
早く履いて雪の中を歩きたくなる。

お母さんは早く脱ぎなさいと言う。
ケンタロウはこのまま履いていて、
お母さんに見つかったら怒られるが、
このまま外に走って出ていきたい
気持ちになっていた。

駅トイレの神さま

朝、電車で会社に向かっている。
突然便意を催してきた。
会社までもちそうもない。
次の停車駅で降りてトイレに行こう。
会社には十分間に合う時間の電車に
乗っていたので遅刻はしないだろう。
停まったと同時に電車から降りた。
プラットフォームを急ぎ足で歩き
トイレを探す。
階段を降りたところに男子トイレがあった。
トイレに飛び込み、空いている個室を探す。
入り口に近い個室に直行。
急いでズボンをおろす。
下痢気味だ。
朝食の冷えた牛乳のせいだろうか?
しばらくぶりの牛乳だったので
腹が驚いたのだろうか。

スッキリしてトイレットペーパーを取る。
取るつもりが、アゼンとした。
トイレットペーパーが無い。
ズボンのポケット、カバンの中をさぐる。
どこにもティッシュは入っていなかった。
ティッシュの代わりになるものも無い。
困った、あーー困った。
他に空いている個室があったのに
トイレットペーパーの有無を確認しないで
入ったのを悔やんだ。

手洗いのところで足音が聞こえる。
恥ずかしいのをこらえて、
「すみません、トイレットペーパー
なかったので、どこかに置いてあったら
投げ入れてくれないですか」と言った。
手洗いのところにいた人は
「ごめーん、急いでいるのでー」と言って
足音が遠ざかっていった。

どうしよう、どうしようと思っても
このまま出て行くわけにはいかない。
「あーー、神さまーー、かみさまーー」と
つい、声に出してしまった。
と、その時、個室の上から
ソフトボールくらいの大きさに丸められた
トイレットペーパーが天井から落ちてきて
頭に当たった。
あわてて両手で受け取った。
1万円札が落ちてくるよりうれしかった。

駅トイレには神様がいるのだろうか?
ありがたく使わせていただいた。

遅刻しないで会社に着いた。
今朝の不思議な出来事を同僚に話した。
同僚は、
「おまえ、まだ知らなかったのか?
駅トイレのトイレットペーパーは
音声対応で、『カミサマ』って言えば
天井から落ちてくるんだぞ」と、
ニヤニヤしながら教えてくれた。
みなさん、駅トイレの個室から
切羽詰まった声で「カミサマ」と言う声が
聞こえたら、
トイレットペーパー1回分を丸めて
天井の隙間から投げ込んであげて下さい。

貯金箱

パソコンに外付けする外部記憶媒体のように
大容量で高速でさらに正確に呼び出すことが
できる外部脳装置が開発されて
人は脳みそで記憶する必要がなくなった。
外部脳装置は、脳みその記憶に比べ
劣化や勝手に消えたりしない。
このため、脳は外部脳装置にアクセスする
機能があれば良いだけになってしまい
不要な部分は退化して縮小してしまった。
頭の形だけは以前のままなので、
頭の中ががらんどうになってしまった。

ある人が貯金箱として活用しようと
頭の後ろ側の上部にコイン投入口を
取り付けた。
それは便利、空きスペースの有効利用だ、
面白いと同じように考える人が出てきた。

小銭を財布に入れると膨らんでしまうので
頭の中に入れた。
500円玉だけを入れている人もいる。
女性は硬貨を入れたら体重が重くなると考え
お札を小さく折りたたんで入れる人もいた。

有名人が亡くなった時、
頭の中に蓄えられていた金額が
公表されるようになった。
みんなもそこそこ頭の中にお金を
貯めるようになった。
頭の中にいつでも入れることはできたが
頭を割らないと出すことはできなかった。
そのお金はそのまま棺に入れられた。

今まで三途の川のわたり銭程度だったが
がっぽりお金を儲けたのは閻魔大王だった。
閻魔大王は頭の中から取り出したお金を使い、
こんどの休暇に、みんなが良いところだと
言っている天国に旅行しようと考えていた。

長寿菌

M博士はテレビを観ていた。
健康番組で長寿の村を放映していた。
そこの村の人は長寿だと言っている。
そこの地方の特産物の〇〇野菜を
常時食べていると言う。
村の人が畑でその野菜を育てている
ところが映っていた。

M博士は〇〇野菜を食べていれば
長生きできるのかと思った。
それならもっともっと宣伝されていて、
野菜売り場に大量に置いてあるのではないか。
なんかちょっと違う気がした。
野菜ではなく、その土地特有の、
もっと具体的に言えば、
その土地の畑に何かあるのかと考えた。
M博士はその村に行って土を採取した。
土の中に長寿にする菌が存在するのではと
考えて調査した。
いろいろ探したが見つからなかった。

M博士は再度現地に行った。
老人たちが畑仕事をしていた。
そこの畑の横は雑草が生えていた。
仕事をしていた老人に聞いたら
「そこは以前は山田さんのじいさんが畑を
やっていたが80才で亡くなったなぁ。
そっち雑草が生えている所は
佐藤さんのばあさんが畑をやっていたが
84才に亡くなって草ボウボウよ。
家に居ても暇だから畑仕事やってんのさー」と
教えてくれた。

M博士は、ハタと気付いた。
今畑に出ている老人は年をとっても元気だから
外に出て畑仕事をしているだけで、
畑仕事をしているからとかいつも○○野菜を
食べているから長寿だという事ではないことを。
長寿菌なんて存在しないのだろうな。

ケンタロウ自転車に乗る

お父さんが子供用の自転車を買ってきた。
もちろん中古の自転車だ。
お父さんがどこかで探してきたのだろう。
ケンタロウは自転車に乗ったことがない。
幼児用の補助輪のある自転車にも
乗ったことがない。

サドルにお尻を乗せてハンドルを握る。
後ろの荷台をお父さんが押さえている。
ぎこちなくペダルを踏む。
腕に力が入りハンドルが左右に振れる。
何回かお父さんが押さえてくれて
乗っているうちに
なんとなくうまく乗れそうな気がしてきた。
うまく乗れそうだと思ったとき、
お父さんが押さえてくれていると思って
後ろをみたらお父さんは押さえていなかった。
そのとたんにハンドルを大きく回してしまい
大きく転んでしまった。
草むらに倒れたので痛くはなかったが、
次はうまく乗れる感覚がわかった。
そのとおり、次は一人でぎこちないが
何とか乗ることが出来た。
コツを掴んだら、徐々にスムーズに
余裕をもって乗りこなせるようになった。
ケンタロウは、何回も練習したことは忘れて
自転車に乗ることなんて簡単だーと思った。

ケンタロウは、今までポッポに引っ張られて
一緒に走っていたが、これからは自転車に
乗っていればポッポの走る速さで並んで
走ることが出来ると思いニヤニヤした。
自転車に乗れば遠くまで行く事ができる。
行動範囲も広くなるだろう。
以前、虹が地面から出ているところを
見たくて、歩いていったことがある。
いくら歩いても虹が出ているところに
着かなかった。
今度、空に大きな虹が見えたら、
自転車に乗っていけば、虹が出ているところが
どうなっているのかわかると思った。
ケンタロウは自転車に乗れることは
良いことばかりだと思った。

訳あり物件(2)

以前、その部屋に入居した夫婦やカップルが
別れてしまうという訳あり物件を紹介した。
今回もブラックで要望が多い部屋だと
思うのですがネ。

その部屋は最初は働き盛りの若い女性が
入居した。
出社してこないと言うので会社の上司が
部屋に来た。
通勤に使用している車が駐車場にあった。
部屋を行き来していた同僚がスペアキー
持っていたので、彼女に来てもらい
スペアキーで玄関ドアを開けた。
入居者の女性は部屋で亡くなっていた。
後で遺族の人に聞いたら、
夜ベッドで寝ていて急性心不全
亡くなったのではないかと教えてくれた。

次に同じ部屋に中年の男性が入居した。
前に住んでいた女性がこの部屋で
亡くなったことを伝えても気にしないと言う。
そして、家賃が安くなったぶん得だと言う。
友達が釣りに行く時間になっても来ないので
この部屋まで来た。
電話も繋がらないし、いつも使っていた
バイクが駐車場に置いてあったので、
部屋にいるだろうとなった。
他の部屋で管理人の電話番号を聞いて
私に連絡が来た。
私は前例があるので悪い気がしていたが
スペアキーを持ってその部屋に行った。
友達が玄関のドアを開けた。
男性は釣りの雑誌の横で亡くなっていた。
急性心臓病だった。

管理人としてはショックである。
このような場合、次の入居者は
なかなか決まらないし、
さらに家賃を下げなければならない。
不動産会社に訳ありで入居者を募集した。

母親が住むアパートを探していた、
息子夫婦が入居を決めてくれた。
田舎に住んでいた両親だが、
先月父親が亡くなった。
足が少し不自由な母だけが残された。
母と一緒に住むには
息子の家は子供もいて無理だった。
そこで、息子は家の近くにある
このアパートに母が住むことを決めたのだ。
家賃は相場よりだいぶ安かった。
母親には前に住んでいた人の事は
伝えていない。

母親は田舎では細々と野菜を作ったり
花を育てていたのだが、
アパートに住んでからはタクシーを利用し、
ショッピング、映画や外食に出かけた。
今までのような夫の縛りがなくなり、
部屋代は息子が出してくれているので
お金はけっこう自由になったからだ。
母親は、息子の思惑などどこ吹く風のように
人生を楽しんでいる。
残念ながら、長寿を全うしそうだ。