文の林

つたない文章の雑木林です

貯金箱

パソコンに外付けする外部記憶媒体のように
大容量で高速でさらに正確に呼び出すことが
できる外部脳装置が開発されて
人は脳みそで記憶する必要がなくなった。
外部脳装置は、脳みその記憶に比べ
劣化や勝手に消えたりしない。
このため、脳は外部脳装置にアクセスする
機能があれば良いだけになってしまい
不要な部分は退化して縮小してしまった。
頭の形だけは以前のままなので、
頭の中ががらんどうになってしまった。

ある人が貯金箱として活用しようと
頭の後ろ側の上部にコイン投入口を
取り付けた。
それは便利、空きスペースの有効利用だ、
面白いと同じように考える人が出てきた。

小銭を財布に入れると膨らんでしまうので
頭の中に入れた。
500円玉だけを入れている人もいる。
女性は硬貨を入れたら体重が重くなると考え
お札を小さく折りたたんで入れる人もいた。

有名人が亡くなった時、
頭の中に蓄えられていた金額が
公表されるようになった。
みんなもそこそこ頭の中にお金を
貯めるようになった。
頭の中にいつでも入れることはできたが
頭を割らないと出すことはできなかった。
そのお金はそのまま棺に入れられた。

今まで三途の川のわたり銭程度だったが
がっぽりお金を儲けたのは閻魔大王だった。
閻魔大王は頭の中から取り出したお金を使い、
こんどの休暇に、みんなが良いところだと
言っている天国に旅行しようと考えていた。