文の林

つたない文章の雑木林です

ケンタロウ自転車に乗る

お父さんが子供用の自転車を買ってきた。
もちろん中古の自転車だ。
お父さんがどこかで探してきたのだろう。
ケンタロウは自転車に乗ったことがない。
幼児用の補助輪のある自転車にも
乗ったことがない。

サドルにお尻を乗せてハンドルを握る。
後ろの荷台をお父さんが押さえている。
ぎこちなくペダルを踏む。
腕に力が入りハンドルが左右に振れる。
何回かお父さんが押さえてくれて
乗っているうちに
なんとなくうまく乗れそうな気がしてきた。
うまく乗れそうだと思ったとき、
お父さんが押さえてくれていると思って
後ろをみたらお父さんは押さえていなかった。
そのとたんにハンドルを大きく回してしまい
大きく転んでしまった。
草むらに倒れたので痛くはなかったが、
次はうまく乗れる感覚がわかった。
そのとおり、次は一人でぎこちないが
何とか乗ることが出来た。
コツを掴んだら、徐々にスムーズに
余裕をもって乗りこなせるようになった。
ケンタロウは、何回も練習したことは忘れて
自転車に乗ることなんて簡単だーと思った。

ケンタロウは、今までポッポに引っ張られて
一緒に走っていたが、これからは自転車に
乗っていればポッポの走る速さで並んで
走ることが出来ると思いニヤニヤした。
自転車に乗れば遠くまで行く事ができる。
行動範囲も広くなるだろう。
以前、虹が地面から出ているところを
見たくて、歩いていったことがある。
いくら歩いても虹が出ているところに
着かなかった。
今度、空に大きな虹が見えたら、
自転車に乗っていけば、虹が出ているところが
どうなっているのかわかると思った。
ケンタロウは自転車に乗れることは
良いことばかりだと思った。