文の林

つたない文章の雑木林です

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

母の詩(4)

母は亡くなって20年呼吸するのが苦しくて呼びたくない救急車を呼んで入院したのは二日だけ 山菜取りで川を越えていく次々と山菜を見つけて奥へ急に動けなくなってしばし休憩して戻ってきた 今思えば、もったいない誰も引き継いでくれなかった母の味と出来…

母の詩(3)

母は亡くなって20年その後の見られなかった世界とても会わせたかったな息子の嫁さんと元気な孫たち ストーブの上の煮しめの大きな鍋昆布だしの醤油の臭いがただよう今でも醤油味の煮物のかおりで年の暮れを思い出してしまう 普通は会社に依頼する私のは母…

母の詩(2)

母は亡くなって20年50をこえて父と始めた社交ダンス結婚45年の祝いの場で父と照れながら踊っていた プロ並みの蒸かしまんじゅう蒸気から美味しさが噴き出てくる少し冷ましてからガブリと噛むと中のあんこの熱さに舌が驚く 今年はうまくできたか気にし…

母の詩(1)

母は亡くなって20年最初は風邪かなと思われた咳頼りの先生から余命言われそれ以上に延びなかった5年 うつわが足りず湯飲みに入ったたくさんの茶わん蒸し田舎料理しかできない母が覚えた新しい料理 母の結核の付き添いで風船を膨らませる力がなく父さんに…

ケンタロウ家の水

ケンタロウがまだ小さい時、裏玄関にあるポンプで水をくんでいた。水をくむのはケンタロウの仕事だった。お父さんにどこから水が出てくるのと聞いたら地面から10m位下にある水だと言う。地下にたくさんの水が溜まっていても毎日ポンプでくみ上げていれば…