文の林

つたない文章の雑木林です

学習ワクチン

ウイルスに対するワクチンのように
机に向かって勉強しなくても学校で習う知識が
注射1本で習得可能になる学習ワクチンが開発された。
ただし、定着させるためにはいくらかの復習が必要になる。
学習ワクチンとリモート学習が普及するにいたって
学校は必要なくなった。
体育はモニターを見て体を動かし、
図画工作や家庭科はモニターでノウハウを知り
自由な時間に習得できる。
モニターで全国どこからも視聴できるので
教え方が上手な先生だけが職業として残った。
学習ワクチンは小学生1年生用から、
高校3年生用まで12種類作成され、通常は1年に1回
接種できる。
優秀な人は年に最大2回まで接種でき
最低6年で高校卒業の知識を持つことが可能になった。

ワクチンの開発には安全性や実効性を確かめるために
数々の段階を経なければならない。
当然、人間に接種する前には人間に一番近い猿での
臨床前段階での試験が行われた。
学習ワクチンの有効性が高まるにしたがって、
高校レベル知識を持った猿が出現してきた。
その猿たちは、さらに学習し学習ワクチンの
開発に着手し始めた。
猿が開発したのはさらに進化させた「優秀ワクチン」
人間の本能である勉強より遊びを優先させる
ワクチンだ。
当然、このワクチンの方が急激に人間に普及した。
開発した猿たちは、陰で「遊習ワクチン」と呼んでいた。