文の林

つたない文章の雑木林です

母の詩(1)

母は亡くなって20年
最初は風邪かなと思われた咳
頼りの先生から余命言われ
それ以上に延びなかった5年

うつわが足りず湯飲みに入った
たくさんの茶わん蒸し
田舎料理しかできない母が
覚えた新しい料理

母の結核の付き添いで
風船を膨らませる力がなく
父さんに頼んでいた

親兄妹のいない土地に来て
何があっても帰る場所はない
苦しくても頑張っていた母

私が小さかったころ
手の甲にシミがあると言う
顔にはシミが無かったのに

運動会の日も忙しいのに
昼には稲荷ずしや巻きずし
食べきれないほど作ってきた

私の学生時代に届いた
初めてもらった母からの手紙
今も宝物入れにしまってある