文の林

つたない文章の雑木林です

母の詩(2)

母は亡くなって20年
50をこえて父と始めた社交ダンス
結婚45年の祝いの場で
父と照れながら踊っていた

プロ並みの蒸かしまんじゅう
蒸気から美味しさが噴き出てくる
少し冷ましてからガブリと噛むと
中のあんこの熱さに舌が驚く

今年はうまくできたか気にしていた
甕に漬けられたハタハタの飯寿司
いかの腹に足を突っ込んだいかのすし

鉤針でコツコツあんだ手袋
習った編み機であんだセーター
外仕事ができない時の家の仕事

家の中では酸素発生機
外出時は携帯酸素ボンベ
ビニールチュ-ブで鼻に繋がっていた

夜中に救急車で運ばれ
翌々日みんなに看取られ
苦しかった咳は止まった

うすい頬紅、少しだけ口紅
苦労したことがなかったような
穏やかに目を閉じてた死化粧