文の林

つたない文章の雑木林です

ケンタロウの初恋

小学校に入って初めての教室、
横に赤い服を着た女の子がいた。
花ちゃんと初めて会った。
先生が次々に生徒の名前を呼んでいく。
花ちゃんは「は~ぃ」と返事をした。
えっ、返事は「はい」だろう、ケンタロウは
返事のしかたに男の子と女の子で違いが
あるのかと思った。
花ちゃんは女の子が集まった中では大きな
目を細めて大きく口を開けて笑う。
授業で答える声は小さかったが、笑い声は
大きかった。
真剣に黒板を見ている時、くちびるの横が
すこし上向きになるので笑っているように
見える。
先生が、花、わかるかと質問したら、
わからないのか、うじうじしていた。
ケンタロウは答えがわかったので小さい声で
教えてあげたかったが恥ずかしくて
できなかった。

明日は遠足だ。
名犬ポッポも一緒に行きたいと言ったが、
ポッポは小学生じゃないからダメと断った。
おやつは学校で決められた金額分買うことが
できる。
もう、おやつは買ってある。
遠足で行く場所は学校近くの原っぱだ。
天気は晴れだ、みんなで歩いていく。
みんなと遊んだ後は昼食だ。
男の子も女の子も数人で集まり座った。
リュックからおにぎりを取り出す。
ケンタロウのおにぎりは他の子のおにぎり
よりも1.5倍くらい大きい。
お母さんのつくるおにぎりはいつも大きい。
真ん中には梅干しが入っている。
ケンタロウは水筒の水を飲みながら、
おにぎりを一気に食べてしまった。
あと残っているのは、おやつだけだ。
近くの女の子たちと座っていた花ちゃんが
ケンタロウに「はい」と言ってキャラメルを
1つぶくれた。
ケンタロウはあわてて「ありがとう」と言うつもり
だったが言葉が出てこなかった。
どうして、ケンタロウにくれたのだろうと思った。
たぶん、他の男の子にも配ったんだろうと
考えて、ホッとした。
でも、うれしかった。
キャラメルはとても甘くておいしかった。

家に帰ってポッポに話した。
「花ちゃんはクラスの中で一番かわいくて、
僕にキャラメルくれたんだよ」
ポッポは、
「花ちゃんもケンタロウは恰好いいって
思ってるんじゃないの」と言ってくれた。

そんな花ちゃんはお父さんの転勤に伴い
転校していってしまった。
ケンタロウは学校に行くのが少し楽しく
なくなった。