ケンタロウの家では柴犬を飼っている。
犬の名前は「ポッポ」。
お父さんが、「ポッポの家をつくるぞ」と言う。
今まで家の玄関がポッポの寝場所だった。
納屋や物置から板や棒などを持ってきた。
お父さんがノコギリで適当に切って、
これは屋根、これは壁とか言う。
材料がそろったところで、
ケンタロウは「後は一人でやるよ」と言った。
お父さんは「大丈夫か」と聞いてきたが
「なんとか頑張ってみる」と答えた。
ケンタロウはプラモデルは作ったことはあるが
木材で小屋なんて作ったことはなかった。
何でも初めてのことはあるんだ、
チャレンジだーーと思った。
ケンタロウは板を並べながら、
どのようにして組み立てるか考えた。
なんとか頭の中に組立図が出来た。
板と木の棒を釘で打ち付けて作り始めた。
釘が板からはみ出したり、
間違って打ち付けて釘を抜いたことも
何回かあった。
屋根や壁が少しかたむいて、
いたるとこに隙間がある小屋が出来た。
雨が降ってきたら雨漏りするので
ちょっとかわいそうだなと思った。
でも、夏は風通しがよくて
これで良いのだと、無理やり納得した。
お父さんは、出来上がった犬小屋を見て
「へたくそだな、最初だからこんなもんか~」と
しげしげと小屋の中をのぞき込んでいた。
ポッポに新しい家だよと言ったら
喜んで小屋に入っていって、
顔を外に出してケンタロウに
「ケンタロウ一人で作ったわりには
とても上手だよ」と言ってくれた。
ケンタロウは、大工道具を使って
大型のものを作り上げたので
見栄えが悪くても満足した。
次に作るときは、自分で設計して
ノコギリで板を切って、もっと立派なものを
作る自信が出来た。
その後、ケンタロウは中学校では
技術の時間が大好きになり
特に木工は先生に褒められるくらいになった。
ケンタロウが大人になって
趣味と実益を兼ねて、はやりのDIYで
収納棚とか本棚を作るのは先の話だ。