文の林

つたない文章の雑木林です

ケンタロウとポッポ

ポッポは、ケンタロウが小さい時から一緒に
遊んでいる白くて賢い犬だ。
家族の中でケンタロウに一番なついている。
どこに行くのも一緒で、ケンタロウの友達だ。

野原にトンボやちょうちょうをとりに
虫取り網と虫かごを持って出かけた。
小さい川があり、底の方に魚が見えたが
お父さんは川に入ったらダメという。
川は浅く見えていても深いところがある。
川の中に生えている藻に足が絡まると
動けなくり溺れてしまう。
転んで流されたら岸にたどり着けなくなる。
川はとても危険だと教えてくれた。

原っぱで数匹のトンボを捕まえた。
川のそばの草に大きなトンボがとまっていた。
ケンタロウはゆっくり静かに近づいて
トンボをめがけて虫取り網をかぶせたが
一瞬早く飛んで行ってしまった。
飛んで行ったが、すぐ近くにとまった。
ケンタロウはまたトンボに近づいていった。
そこが、川のふちの草の上だと気づかず
川の中に足を入れようとした。
ケンタロウは、トンボだけみていて、
足下に川が迫っているのがわからなかった。
ポッポはケンタロウが川に落ちたら危ないと
ズボンを咥えて引っ張った。
ポッポは力いっぱい引っ張ったが、
ケンタロウは、川に落ちてしまった。
さいわい、浅瀬ですぐに岸に上がることが
できた。
でも、服はびしょ濡れだ。

濡れたまま家に帰ったらお父さんに
怒られてしまう。
服とズボンを脱いで木の枝にひっかけ
乾かすことにした。
乾くまで草の上で寝転がって空を見た。
すぐ横にポッポが来て横になった。
青空の中の雲の形をみて、ポッポに
あの大きな三角は、ケンタロウの家だね
あっちの細長いのは、ポッポのしっぽだねと
話ながら時間をつぶした。
ケンタロウはポッポに、川に落ちたことは
ケンタロウとポッポだけの秘密だから
お父さんには内緒だよと言った。

太陽の熱で乾いた服を着て家に帰った。
お母さんがケンタロウを見て、
川にでも落ちたのかいと聞いてきた。
ケンタロウは、どうしてわかったのだろうと
思ったが、「川に行ってない」と言った。
川に落ちたのは、ポッポとの秘密なのに
ポッポがお母さんにしゃべったのかなぁ?
ポッポは、ケンタロウの服が裏返しに
着ているからバレたのだと知っていた。