文の林

つたない文章の雑木林です

ケンタロウの習い事

日曜日の午前中は習字だ。
少し歩いて定年退職した国語の
先生の家に習いに行く。
友達も何人か来ている。
今日書く字は『元気』だ。
長テーブルに座って墨をする。
先生の字をまねて書く。
ケンタロウは何回か書いて、
これはうまく出来たと思うのを
先生のところに持っていった。
先生は赤い墨がついた筆で
力強くバッと修正してくる。
ケンタロウは完璧だと思っていたので
少しがっかりする。
友達もいるので、遊びの延長のような
感じで先生が修正したところなんか
気にしないで次々に書いていく。

友達は、なぜか半紙に『お金』と
書いてニヤニヤ笑っている。
ケンタロウは、「どうしてお金なの」と
聞いた。
友達は、「練習、練習」と言いながら
『お金』、小さく『ほしい』と書いている。
友達とコソコソしゃべっていたら
先生から「うるさいぞ、真面目に書け」と
叱られた。
おじいちゃん先生だが怒るとこわい。
お父さんは習字を習うと字がきれいに
書けるようになると言っていたが
そうはならなかった。
習字を習った後もケンタロウが書く文字は
汚くて自分でも読めない時があった。
習字は友達と会う休日だった。

そろばんも習っていた。
「ゴワサンでネガイマシテー」
皆がいっせいにパチパチと玉をはじく。
掛け算もやるので九九は完璧になる。
そろばんを使わないで頭の中で
玉をはじくまでにならなかったので
暗算は得意になることはなかった。
習字と違って時間内に行わなければ
ならないので時間には厳しくなった。
そろばんの試験は街の会場で行われる。
帰りにデパートの上の階にある広い食堂で
ホットケーキを食べるのが楽しみだった。
家でお母さんがフライパンで作ってくれる
ホットケーキよりふわふわと柔らかく
甘い甘いシロップがかかっていた。
ケンタロウは、月に1回はそろばんの試験を
受けても良いなと思った。