文の林

つたない文章の雑木林です

おままごと

子供のおままごとは両親の鏡だ。
恐ろしいことにふだん親が行っていることを
無邪気に、そして忠実に再現してくれる。

ミドリ「お帰りなさい」
ケンタロウ「ただいま~、今日も疲れたよ
   晩ごはん、何?」
ミドリ「アイちゃんが来て、さっき帰ったのよ
  アイちゃんのとこ、たいへんなんですって
  ご主人が転勤なのよー
  赤ちゃんはまだ小さいのにね」
ケンタロウ「それはたいへんだね」
ミドリ「それで、アイちゃんは実家に帰って
  ご主人がひとりで行くんですって
  それで、ご主人は家事が全然できなくて
  ごはんも焚けないのよ」
ケンタロウ「それはたいへんだね」
ミドリ「それで今、アイちゃんは子育てしながら
  ご主人に料理を教えているのよ
  炊飯器の使い方、味噌汁の作り方、
  卵焼き、カレー、肉じゃがの作りかたとか
  簡単にできる料理から教えているのよ」
ケンタロウ「うん、わかった、腹減ったよ~」
ミドリ「料理だけ教えてもダメだから
  洗濯機の使い方、洗濯物の干し方、
  洗濯用や食器用の洗剤の選び方、
  お風呂やトイレの掃除の仕方を教えたり、
  それはもう、もう、たいへんなんですって
  掃除機の使い方だけはわかるようなの」
ケンタロウ「たいへんなのはわかったから、
  オレのごはんは?」
ミドリ「あら、そうね、ちょっと待っててね」

カップヌードルの空の容器を持ってきた。
ミドリ「はいどうぞ、早く食べないと伸びるわよ」
ケンタロウ「えっ、ミドリのウチのごはんって、
  いつもこうなの」
ミドリ「そんなことないわよ、
  今日はごはんが出てくるだけ・ま・し・よ」