文の林

つたない文章の雑木林です

ケンタロウのお使い

お母さんのパンはとても美味しい。
いい匂い、きれいな焼き色がついていて
見てるだけでもヨダレが出てくるよ。
お母さんがおばあちゃんにも
食べさせてあげたいと言うので、
ケンタロウは僕が届けると言ったんだ。
お母さんはケンタロウ一人で行けるのかいと
心配そうに言うので、
僕は「お兄ちゃんだから」と言ったんだ。
お母さんはごほうびだよと飴玉をくれた。
ケンタロウはパンの入ったカゴをもって
家を出た。

近くの柵の中にいた牛さんが言った。
私が作ったミルクが入っているので、
とてもとても甘くておいしいよ。
おばあちゃんは、きっと喜んでくれるよ。
寄り道しないで行きなさいよ~

ポッポが一緒についていこうかと聞いてきた。
ポッポはケンタロウが生まれる前からいる
賢い白い犬、ケンタロウ家の名犬だ。
最初の名前は「ポチ」だった。
ケンタロウが小さい時に「ポッポッポ」と
呼んでいたので「ポッポ」と呼ばれるように
なったとお父さんが教えてくれた。

空は青く、一面に花が咲き、
さわやかな風が吹いている。
昆虫たちがそこらじゅう飛びまわっている。
ケンタロウは、特にトンボに興味がある。
少し遊んでいこうかと思ったが、
今はおばあちゃんの家に行こうと思った。

そこに豚さんがトコトコ歩いてきた。
ケンタロウは昆虫たちと遊んでいろよ
そのカゴは、そこに置いておけ、
俺が見ていてあげるよと言ってくれた。

ケンタロウはカゴを置いて、虫たちを
追っかけ始めた。
蝶々は花から花に、トンボは止まったり
急に前に飛んだりしている。
草の中から急にバッタが飛び出てくる。
そろそろ、おばあちゃんの家に行こうと
豚さんを探した。
あれ、へんだな、さっきそこに豚さんがいて、
カゴも置いてあったのに。
ケンタロウは、そこら辺を探したが
豚さんもカゴも見つからなかった。
どうしよう。
おばあちゃんの家に行っても
渡すパンはなくなったし、家に帰っても
お母さんになんて言えばいいんだろう。
ポケットに手を突っ込みしょんぼりした。

ポケットに入っていた飴玉を食べようとしたら
木の上にいた猿さん近くによってきた。
待っていても豚さんは戻ってこないよ。
カゴは俺がとりかえしてやるよ、
そのかわり、その飴玉を俺にくれと言う。
ケンタロウは、飴玉を食べたかったが、
カゴを取り返してねと言って飴玉を渡した。

飴玉を受け取った猿さんは、するすると
木の上に上がっていった。
飴玉をなめながら、こりゃうまいや、
だまして悪いな、ケンタロウと言った。

お母さんのパンをなくし、飴玉を取られて
ケンタロウは泣いてしまった。

それを見ていた、馬さんが言った。
おばあちゃんに正直に言おうよ。
一緒について行ってあげたいけど、
僕はつながれているので行けない。

うさぎさんが、馬さんのうしろから
ピョンピョン跳ねながらやってきた。
私が一緒についていってあげるよ、
早く、おばあちゃんの家に行こう。

おばあちゃんの家に着いた。
ケンタロウは泣いていて何も言えない。
ウサギさんは、豚さんにパンを取られたこと
猿さんに飴玉を取られたこと、
豚さんと猿さんが悪いんだよと言った。
おばあちゃんは、
外に出たら、学校で習っていないことが
たんさんあるんだよ。
だから、良いことも、悪いこともあるのさ。
悪いことは、今、覚えたんだから、
同じことをやらなければいいんだよ。
それと、正直に言うことはとっても大事な
ことだよと言った。

帰りはおばあちゃんも一緒に行くよと
言ってくれた。
家に近づくと、勢いよくポッポが走ってきた。
僕が一緒に行かなかったけれど、
大丈夫だったのと聞きながら
ケンタロウにまとわりついてきた。