文の林

つたない文章の雑木林です

硬貨を育てる

髪の毛がモジャモジャのM博士は考えた。
今までいろいろな発明や研究を行ってきたが
ぜんぜん売れず、お金にならなかった。
生活費も底をついてきた。
手っ取り早く、売れるもの、買い手がつくもの、
お金になるもの、お金が欲しいと考え、
M博士は閃いた。
お金を作ればいいのだと!
お札を勝手に作れば、偽札である。
硬貨を勝手に作れば、偽貨(ぎか?)、
「ぎか」って、聞いたことがないなぁ。
偽硬貨をつくる人がいないからだろう。

硬貨の原価をネットで調べた。
1円硬貨は、約3円、そういえば、
東急リバブルのコマーシャルでやっていたな。
5円硬貨は、約10円
10円硬貨は、約13円
50円硬貨は、約12円

ん~、国のために原価割れしている10円
硬貨を作ろうと決めた。
10円以下で10円玉を作る下地はあった。
大豆だ。
大豆は安いし、豆腐、納豆、今は肉も作って
いるからだ。
1粒蒔いたら、最低100粒はできる。

M博士は、モジャモジャの髪の毛をさらに
モジャモジャにして研究に没頭した。
大豆を厚い板で挟んでつぶし、コイン状にして
10円玉のDNAを注入した。
とりあえず、1粒を畑に植えた。
たくさん実がつくように、土に堆肥やら
化学肥料も入れた。
10日たって芽が出てきた、
さらに日数がたって、茎が伸びてきて
葉が付いてきた。
こぶりな花が咲いてサヤが出来てきた。
枝豆は大豆が未熟なうちに収穫したものだ。
M博士は、サヤが緑色のうちに一つだけ
開けてみた。
もしかしたら5円玉が出来ているかな思ったが、
緑色の10円玉が出来ていた。

植えてからら3ヶ月たち、サヤが茶色になり
カラカラに乾いて、収穫できるようになった。
サヤの中から茶色の10円玉が出てきた。
平等院鳳凰堂の模様がクッキリできている。
どこからどうみても10円玉だ、
大きさ、金属の材質感、重さも問題ない。
M博士は感激した。
1株から100個の10円玉ができれば千円だ。
10株植えれば、100株植えればと夢が膨らむ。

試しに自動販売機で確認する。
問題なく認識したようで、商品が出てきた。
いろいろ試しているうちに、お湯に浸けた場合
大豆の本性が現れ、ふやけた豆になってしまう。
水に浸けたぐらいでは問題ないから
誰もにせものとは気づかないだろう。

M博士は、やっと実用化できるのがわかり
安心した。
食事時間も惜しんで試していたので、
完成を祝い、ゆっくり食事をした。
本物の10円玉をみて、おまえのDNAが
大豆に完璧にコピーされたなと感慨深く
見ているうちに、あやまって味噌汁の中に
落としてしまった。
箸で10円玉をつかみ上げようと
味噌汁に入れたところ、味噌汁の具に
入れてなかったふやけた豆が1粒出てきた。

造幣局桜の通り抜けで有名だが、
建物の見えないところの畑で、、、、