文の林

つたない文章の雑木林です

ホラー小説

私は、電話ですよと隣の女性から
受話器を受け取った。
「私の事、覚えていますか
 私は絶対忘れません
 あなたの事をずっと監視しています
 覚悟してください」と言って音声が途絶えた。
若い女性のか細い声、聞き覚えが無かった。
私は、何これ、間違い電話なの?
同じ内容の電話が何回もかかってきた。
会社の電話なので大きな声で追及することも
できず、ストレスが溜まっていく。
電話恐怖症になり、出社することができず、
会社を辞めた。

ゆっくり次の会社を探そうと考えた。
妻は乳製品の販売のパートをしていて
日中は家にいない。
時間があるので小説を書くことにした。

なんと、今度は家にも同じ内容の
電話がかかってきた。
なぜ、なぜ、私が退社して家に居るのを
知っているの?
何回もかかってきた。
気味が悪いので電話線を引き抜いた。
なんと、あろうことか、家に来た。
姿は見えないが電話内容と同じことを言った。
玄関ドアに鍵をかけていても急に目の前に
現れるときもあった。
とうとう夢の中まで現れるようになった。
恐怖で寝るのが怖くなった。

趣味の小説でサラリーマンの男が
言われのない相手から追われ追われて
最後には発狂するホラーを書いていた。

私は今の状態が、現実なのか、
小説の中なのか、わからなくなってきた。
分かっているのは、追われていることだけ。
たぶん、私は近いうちに発狂するのだろう。

と言うような小説を書いていた私は
高揚して眠られない夜を過ごしていたが、
陽が昇るとグッスリ寝ていた。