文の林

つたない文章の雑木林です

大家さん仕事

私がアパートの前を掃除をしている時
入居者Nさんが玄関ドアを開けて出てきた。
「あっ、おはようございます
いつもきれいにしてくれて、
ありがとうございます」と言った。
私は「きれいな方が気持ちが良いからね、
お礼を言ってくれる人は少ないよ」と言った。

Nさんは「このアパートは、間取りとか設備は
どこかの規格で建てたのですか?」と
聞いてきた。
私は「地元の工務店と相談して建てた」と
答えた。
たしかに全国規模の大きなハウスメーカー
アパートの規格製品を出しているところもある。
このような事を聞かれたのは初めてだった。

Nさんは「私もアパート経営したいと
考えているのだけどね」と言う。
Nさんは半年前に入居したばかりの人だ。
たしか入社したばかりの22歳の人だった。
私が気楽にアパート経営をしているのが
気に入ったのかな。
それとも、入社した早々に会社勤めに
嫌気がさしてきたのだろうか。
私にように上司がいない職につこうとでもと
考えたのかな。

鍵を会社に忘れてきてしまったので
大家さんちょっと開けてほしい、
蛇口をきちんと閉めているのですが
蛇口からポタリポタリと水が漏れている、
今月も家賃の振り込みが遅れているので
催促しなければとか
簡単そうに見えているが、掃除以外にも
いろいろ仕事はあるものなのだよ。
先日は、家賃の振り込みが無くて
遠くの連帯保証人に連絡して来てもらい
スペアキーを使って部屋を開けたら
入居者が倒れていたこともあったよ。
すぐに救急車で運ばれて入院したけどね。
私だって50歳までサラリーマンだったんだ、
アパート経営もそんなに楽ではないぞと
心の中でささやいた。

私は「まぁ、じっくり考えてから始めたら
どうですか」と、まじめに返答したら、
Nさんは、そそくさと車に乗り込んで
出かけて行ってしまった。