文の林

つたない文章の雑木林です

ケンタロウの財布

ケンタロウは財布を持っていない。
必要なときはズボンのポケットに入れる。
お母さんからお手伝とかでお金をもらって
お店でお菓子やパンを買うまでの短い時間は、
ケンタロウの右手が財布になる。
お釣りをもらった時にポケットが財布になる。
走るとジャラジャラと音がする。
ポケットからお金の音を出せるのは
お店からの帰りだけだ。

友達はチャックのついた小さな
きれいな皮の財布を持っていた。
子供が財布を持っているだけで
その家はお金持ちのように見えた。

お母さんが持っているのはがま口だ。
カネゴンの顔見たいな財布を持っている。
お金を入れるところがパックリ開いて
閉めるときは上に付いている金具が
パチッといい音がするんだ。
お父さんの財布は見たことがない。
お父さんはお金も持って歩かないからか?
それとも、ケンタロウと同じく
ポケットが財布なのだろうか?
ケンタロウはお父さんがポケットから
お札を出すときに風に吹かれてお札が
飛んでいかないのかなと思った。

大人の男の人がズボンのお尻のポケットに
はみ出すように大きな財布を差し込んで
いるのを見たことがある。
落ちないか心配だが、とても恰好よかった。
ケンタロウも大人になったら
たくさん仕事してお金をもらい、
大きな財布をお札で膨らませたい。
そして、ズボンの尻ポケットに差し込んで
お店に行きたいなと思った。