文の林

つたない文章の雑木林です

ケンタロウ初めての川釣り

お父さんが急にケンタロウに
「川に釣りに行きたいか」と聞いてきた。
「前に行ったところだけどいいか」と聞く。
ケンタロウは出かけるのなら
どこでも良かったので
すぐに「行く行く行くー」と言った。

良く晴れた日、車に乗って出発した。
大きな道から右に曲がって小道に入った。
舗装された細い田舎道をずっと進む。
お父さんは、もうそろそろ左に
曲がる道があるんだけどな~と言う。
ケンタロウは、前に来たときは
黒い牛がいるところで曲がったよと言った。
お父さんは、生き物はいつもそこに
いるわけではないと言って笑った。
せっかく覚えていることがあったのに
言って損をしたと思った。

何の目印もないところを左に曲がった。
お父さんは左右を見ながらしばらく走り、
この道で間違いないと言った。
砂利道の横を川が流れている。
橋を渡りなだらかな坂を上ったり
下ったりして目的地に着いた。
川原が砂利になっていて広く空いていて
車を停めることができる場所だ。

川岸に立つと魚が泳いでいるのが見える。
けっこう大きいのもいる。
ケンタロウは釣れた魚を入れておこうと
川の淵に穴を掘り周りを石で囲った。
前に来たとき、ケンタロウは危ないからと竿を
持たせてもらえなかった。
今回はお父さんから竿に仕掛けをつけてもらい
釣り始める。
ケンタロウにとって初めての釣りだ。
魚が見えるので、すぐに釣れると思ったが
なかなか釣れない。
急に竿の先がガツンと引っ張られた。
魚がかかったようだ。
お父さんに「釣れた釣れたーー」と叫んだ。
お父さんは竿をゆっくり立てて、
魚を近くに引き寄せるのだと教えてくれた。
釣られた魚が近くに見えてきた。
川岸にピチピチした魚が釣り上げられた。
釣れた魚を川の淵に作った囲いに入れた。
お父さんも釣った魚はそこに入れた。

お昼はお母さんが作った大きなおにぎり。
冷たいお茶を飲みながら食べた。
お父さんは川原で帽子を顔の上にのせて
昼寝している。
お母さんは川の近くで山菜を探している。
ケンタロウはトンボや蝶を追っかけた。

そろそろ帰る頃になり「魚どうする?」と
お父さんが聞いてきた。
ケンタロウは持って帰ると言った。
川の淵の囲いに魚を見に行ったら
あれーーー、10匹以上入れたのに、
一匹もいなかった。
囲いの石の隙間から逃げたようだ。
お父さんに言ったら
「魚は川に戻りたかったんだろう」と
言った。
ケンタロウは「そうだね」と言って
持って帰るのをあきらめた。