文の林

つたない文章の雑木林です

自分の影を売ってしまい
影をなくした話があった。

光はさえげるものがあると影ができる。
自分の影がなくなるのは
体の中を光を通ってしまうからだ。
つまり、頭蓋骨も背骨も大腿骨も
光がさえぎられずに通過してしまうのだ。
影がなくなってしまうより人体を光が
通り抜ける方が恐ろしく感じる。

私は、今、影の恐怖におびえている。
ふつう、人の動きにつられて影が動くが、
影の動きに操られて私が動くようになって
しまったからだ。

私の影がジョギングをするようになった。
私も影につられて走らざるをえない。
会社勤めなので、いつも机に向かっている
私にとって健康増進に役に立ち
とてもありがたかった。
ここまでは良かった。

課長に叱責されて、殺意を持ったことはある。
思うだけで実行する気はなかった。
だが、影の動きにつられてナイフを
握ってしまった。
そして、影の動きにつられて上司を
刺してしまった。
決して私の意志で行ったわけではない。

私は警察に捕まった。
私は、自分の意志ではなく、
影に操られて動かされたと主張しても、
警察はぜんぜん信じてくれない。