文の林

つたない文章の雑木林です

賃貸物件

大家さんが玄関前を掃除していると
入居者が出てきて言った。
「大家さん、居間と寝室の引き戸がピタッと
閉まらないんだけど」と言う。
「建ててから20年近くなっているから、
少しずつ狂ってくるんだよね」
「片方の窓も開けにくいんだけど」と言う。
「そうですか」と言うしかない。
この入居者は半年くらい前に入った人だ。
「それと、よく見ると壁とか床が汚れている
ところが結構あるんだよね」と言う。
「不動産屋さんと部屋を探しているときに
壁とか床を確認しなかったんですか?」
「部屋を決めることだけ考えていて
あまり見てなかったんだよね。
大家さん、この部屋、家賃ががちょっと
高いんじゃないの」と笑いながら言う。
大家さんは
「ここは日当たりが良いし、駐車場に車を
停めやすいでしょう。
すぐ近くにコンビニ2店あるし、
気に入らないようだったら、別の部屋を
探してみたらどうですか?」
「どこか良いところないですか」と聞いてくる。
「探しているときに条件の良い部屋が
空いているかはタイミングだからね。
不動産屋さんを見て回ったらどうですか?」
「仕事が忙しくて、そんな暇ないよ」と言う。
大家さんは
「今月の家賃がまだ振り込まれていないけど、
早く振り込んでもらえますか」と言ったら
「ここは大家さんが親切で優しいので
まだまだ住みますよ」と言って出かけていった。