文の林

つたない文章の雑木林です

介護のつづき

次のステップを垣間見た。
前に「介護」として父をベッドから起こし
トイレに連れて行くことを書いた。
介護している私も介護されると言う
ブラックなフィクションだった。
実際にはまだ父の介護が続いている。
その時は父は一人で立っていることができた。
トイレの中の二ヶ所の手すりを両手で
しっかり握って立っていられたのだ。
これはとても重要なことだった。

「腰が抜ける」って言葉、知っていますか?
小さい飲み屋で焼酎を何杯か飲んでいて、
さらに焼酎のお代わりを頼んだら
店のおやじに「ほどほどにしないと腰が
抜けちゃうよ」と言われたことがある。
いざ帰ろうと席を立とうとしたら、
腰に力が入らず、よろけてしまった。
同僚二人に支えてもらってなんとか
店を出たのを覚えている。
閑話休題

今回、父は腰が抜けた状態だった。
ベッドから起こすのは父の協力が得られず
力技で起こした。
なんとか支えてトイレまで行った。
トイレで一人で立っていられなかった。
用を足す前は、急いでパジャマの下と
紙パンツをおろして便器に座らせた。
用を足した後も、立つことが出来なかった。
私が脇の下に手を入れて立たせ、
上半身を私の肩に持たれかけさせ
紙パンツを上げ、シャツを下げ、パジャマの
下をなんとかあげた。
父は疲れたのかパジャマをはいた後、
もう一度便座に座り込んでしまった。
これは女性一人だったら対処できない
だろうなと思った。

その後、体力が戻ったのか以前と同じように
一人で立っていることが出来るようになった。
今、行っている父の介護は、介護の初級編で
次から次に難易度の高い介護が待って
いるのを感じた。
今後、「介護のつづきのつづき」を書いたと
したら、父はどのような状態になっているのか
たいへん気になるところだ。

夜中の父の寝室の豆電球は暗い。
顔を見ても呼吸しているのか、
布団が上下するか確認するのも
わかりづらい。
イビキが聞こえたり、顔の表情が動くと
安心する。
父の介護は限られた時間の
父との思い出づくりだ。
長く続くことを願っている。