文の林

つたない文章の雑木林です

死ぬこと

私はあの時死んでいたはずだ。
今でも死んでいると思っている。

小学校に入る前、まだ幼かったころの
暑い夏の日だった。
友達数人が集まり川を泳いだり
岸を走ったりして遊んでいた。
追っかけっこもかくれんぼもした。
水は冷たくて気持ちよかった。
私は得意になって泳いでいた。
何回も何回も川を泳いで横切った。
突然足が動かなくなった。
足がつってしまったようだ。
泳ぐことができない、流されていく。
私は空の上から、川の下に沈んでいく
私の姿をみていた。
その時、私は死んだのだ。

うれしい時、喜んでいる私を見ている。
悲しい時、泣いている私を見ている。
私の体の形をした私を見ている。
私は私の事しか知らないので
他の人も同じなのかどうかはわからない。

50歳を超えた時に心臓の血管が詰まり
救急車で運ばれ緊急入院した。
手術台に寝ている私を天井から見ていた。
お医者さんや看護師さんが集まり、
心臓近くの血管の詰まった所を治してくれた。
私は過去に死んでいるので
死ぬことはないと思っていたが
ドキドキしながら手術を見ていた。
一時は体にたくさんの管がつながれていたが
時間の経過とともに外され退院することできた。

今、私は90歳を超え、平均寿命以上
生きている。
私はこの先死ぬことが出来るのだろうか?