文の林

つたない文章の雑木林です

死生観

男は暇になり書き物を始めた。
全ての作品は、退廃的、刹那的で暗い。
ユーモアも非常にブラックだ。
自分には死がまとわり付いているいるのか。
どうして明るい文章が書けないのか悩んだ。

外を歩いている時、いつもは気がつかない
細い横道があった。
少し歩いていくと、木が生い茂った中に
古い小さな病院があった。
「悩み事相談承ります」の張り紙がある。
病院の先生に相談するのも良いなと思い、
中に入ってみた。
玄関からなぜか昔懐かしい臭いがする。
年老いた先生に聞いてもらった。
「人は物心がついた時から死について
考えていますよ、普通の事で問題ない」と
言われた。
そうか、誰でも死に向かい合って考えている
のだと納得した。
「生きていること自体が不思議なのですよ」
とも言われた。
私だけが悩んでいるわけではないと感じて
気分がスッキリしてきた。
少しは明るい楽しい文章が書けるようになった。

数ヶ月経って、また暗い文章になってきた。
そうだ、前に行った病院の先生に相談して
みようと考えた。
病院のあった場所を探した。
ここに病院があったという場所は
ぺんぺん草が生い茂った空き地だった。
空き地になってから数年は経っている
ようだった。
あのとき入った病院、相談した先生は
どこに行ってしまったのだろうか、
私はいったい誰に相談したのだろうか?
不思議に思いながら帰ることにした。
来た道を戻ろうと思ったが、
どうしても来た道が見当たらない。